・総蛋白
人間の血液中には、少量含まれているものも加えると、約80種類の蛋白が存在しています。最も多く含まれるのはアルブミンで、総蛋白とは、アルブミンとグロブリンの和のことです。総蛋白の値が高くなると、グロブリンが増加しているケースが多くなります。総蛋白濃度の測定だけでは、蛋白の異常を特定することはできませんが、蛋白分画を行なうことによって、体内の蛋白量の異常を診断することができます。
*基準値と異常値
基準値:血液中に含まれる総蛋白は、6.7〜8.3g/dlが基準値です。 異常値:基準値より高い数値を示す場合は、水分摂取不足、下痢、嘔吐、静脈うっ血、糖尿病ケトアシドーシス、熱中症、腸閉塞および穿孔といった症状や疾患が考えられます。逆に低い値が現れた時は、出血、潰瘍、蛋白尿(ネフローゼ症候群)、蛋白漏出性胃腸症、栄養不良(アルブミン減少)などによると考えられます。
・アルブミン
血清アルブミンは、体内の血清総蛋白の50〜70%を占め、血漿膠質浸透圧の維持と、ビリルビン、尿酸、遊離脂肪酸といった物質を運搬する役目を果たしています。このため、アルブミンの濃度を測定することは、栄養状態の指標になります。また、アルブミンは肝臓で合成されるため、肝障害の診断にも役立つほか、胃腸管、腎臓といった臓器に障害が起こると濃度が変動するため、こうした臓器の疾患の判定にも有効です。
*基準値と異常値
基準値:血中のアルブミンの基準値は、3.8〜5.1g/dlです。 異常値:この数値より、検査結果が低い値を示すと、体外または体腔内への漏出の増加(ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症、胃炎、熱傷、出血など)や、代謝亢進(甲状腺機能亢進症、ストレスなど)が疑われます。また、アルブミンが減少すると、細胞内外の水分分布に影響するため、測定値が2.5g/dl以下になると、浮腫が起こります。
・A/G比
総蛋白とは、アルブミンとグロブリンの和であり、アルブミンが減少すると総蛋白値は低下し、高い総蛋白値は、グロブリンの増加を意味しています。ところが、アルブミンが低下しても、グロブリンが増加してそれを補い、血清総蛋白の値が正常の範囲内に保たれることがあります。そこで、A/G比(アルブミン/グロブリン比)を測定することにより、血清蛋白の異常を検出することができます。
*基準値と異常値
基準値:A/G比の基準値は、1.1〜1.8です。 異常値:検査結果がこれより低い数値を表した時は、栄養不足(悪液質、消化器系疾患)、肝障害(肝硬変、慢性肝炎)、腎疾患(急性腎炎、ネフローゼ)、悪性腫瘍といった疾患が疑われます。
・尿素窒素(BUN)
尿素は蛋白代謝の最終的な産物で、アミノ酸から生じたアンモニアと二酸化炭素によって、肝臓で合成されます。尿素窒素は、血中の尿素に含まれる窒素の量を表すもので、一般には血清を検体とします。全血中濃度は血清中濃度に比べて、やや低くなります。尿素は腎糸球体から濾過されて尿の中に排泄されるため、血中濃度の測定は、腎臓機能の指標として、診断に広く利用されています。
*基準値と異常値
基準値:血清中の尿素窒素の基準値は、8〜20mg/dlです。 異常値:基準値より値が高い場合は、腎機能障害、腎不全、尿路閉塞、脱水症、体組織の崩壊などの疑いがあり、絶食や大量の蛋白質を摂取した場合にも値が高くなります。基準値より値が低い場合は、肝不全などの疑いがあり、また、妊娠や低蛋白の食生活によっても低くなります。
・クレアチニン
クレアチニンはクレアチンの代謝産物です。筋肉内でクレアチン、およびクレアチンリン酸によって産出され、血液中に放出されます。一方、血液中のクレアチニンは、腎臓から排泄されますが、この血清クレアチニン濃度はGFR(糸球体濾過値)と密接な関係があり、食事や尿量の影響が少ない点で、腎臓機能障害の指標として、その検査は重要です。
*基準値と異常値
基準値:血清中のクレアチニンの基準値は、男性で0.8〜1.2mg/dl、女性で0.6〜0.9mg/dlです。 異常値:基準値より値が高い場合は、腎機能障害、腎不全、尿路閉塞、脱水症、心不全などの疑いがあり、ショックや大量の出血によっても高くなります。逆に基準値より値が低い場合は、筋ジストロフィーの疑いがあります。
・尿酸
尿酸は核酸の構成成分の1つである、プリン体の最終的な代謝産物で、腎臓の糸球体から濾過された後、大部分は尿細管から再吸収されます。したがって、高尿酸血症は、体内における生成亢進と腎臓からの排出の低下などによって起こります。尿酸が過剰になると、尿酸ナトリウム結晶が形成され、関節滑膜や腎尿細管などに付着し、炎症などの病気、特異な症状である痛風関節炎や痛風腎を発症します。
*基準値と異常値
基準値:血清中の尿酸の基準値は、男性で3.5〜7.9mg/dl、女性で2.6〜6.0mg/dlです。異常値:基準値より値が高い場合は、痛風、白血病、多血症、慢性腎不全、悪性腫瘍、Lesch-Nyhan症候群、アシドーシス、さまざまな薬剤による尿酸排泄障害などの疑いがあります。逆に基準値より値が低い場合は、尿細管再吸収障害、妊娠などを疑います。
・総コレステロール
コレステロールは、細胞膜の構成成分やステロイドホルモン、胆汁酸などの前駆体として重要な物質です。血中ではアポリポ蛋白と結合したり、リポ蛋白粒子として存在しており、総コレステロールの約70%が脂肪酸と結合したエステル型、約30%が遊離型です。 血清コレステロールの濃度は、肝機能障害や各種内分泌疾患などで変動します。臨床的に最も高く評価されているのは、動脈硬化の危険因子とする場合で、高コレステロール血症の発見はその面で、きわめて重要とされています。
*基準値と異常値
基準値:酵素法での基準値は130〜219mg/dlですが、望ましいのは200mg/dl以下です。 異常値:日本動脈硬化学会ガイドラインでは220mg/dl以上を高脂血症と判定しており、治療開始のレベルと定めています。そのほか、基準値より値が高い場合は、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、先端巨大症、閉塞性黄疸、脂肪肝などの疑いがあります。一方、低い場合は、無β- リポ蛋白血症、甲状腺機能亢進症、肝硬変などが疑われます。
・LDL コレステロール
LDLは、肝臓から分泌されたVLDL(超低比重リボ蛋白)から生成される物質で、末梢組織のLDLレセプターで細胞内に取り込まれます。LDLの主要成分はエステル型コレステロールで、細胞へのコレステロール供給源として、重要な生理的役割を果たしています。
*基準値と異常値
基準値:酵素法による検査では、LDLコレステロールの基準値は70〜139mg/dlです。 異常値:基準値より値が高い場合は、家族性高リポ蛋白血症(?a 型) 、糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、先端巨大症、脂肪肝、閉塞性黄疸、肥満などの疑いがあり、低い場合は、βリポ蛋白欠損症、家族性低リポ蛋白血症、甲状腺機能亢進症、肝硬変、栄養障害、吸収不良症候群などが疑われます。
・HDL コレステロール
コレステロールは、血中ではアポ蛋白と結合したリポ蛋白粒子として存在していますが、主にLDLとHDLに多く含まれています。このうちHDLに存在するコレステロールのことをHDLコレステロールと呼びます。HDLには、末梢組織から受け取ったコレステロールをエステル化によって内部に取り込み、肝に輸送して異化する機能があります。末梢組織自体でコレステロールを分解することができないため、HDLの持つ役割は大変重要です。
*基準値と異常値
基準値:HDLコレステロールの基準値は、男性で30〜85mg/dl 、女性で40〜100mg/dlです。 異常値:基準値より値が高い場合は、家族性高HDL血症、エストロゲン治療が、低い場合は、LCAT欠損症、アポA‐1欠損症、動脈硬化症、ネフローゼ症候群、肝硬変、Tangier 病、腎不全、糖尿病、肥満、降圧剤の投与、喫煙などが疑われます。
・中性脂肪(TG)
トリグリセリドとは、3分子の脂肪酸がグリセーロールにエステル結合したもので、中性脂肪とも呼ばれています。血清中ではアポ蛋白と結合したり、リポ蛋白粒子として存在しています。食事によって摂取される脂肪のほとんどはトリグリセリドで、主にカイロミクロンとなって血中に出現します。トリグリセリドは生体エネルギーの貯蔵と運搬に関与しており、その測定は脂質代謝異常の検査としてコレステロールとともに最も多く利用されているものです。
*基準値と異常値
基準値:検査法は、リポ蛋白中のトリグリセリドをリポ蛋白リパーゼによって水解し、生成するグリセロールをグリセロキナーゼなどの酵素によって測定するものです。基準値は50〜149mg/dlです。 異常値:基準値より値が高い場合は、糖尿病、動脈硬化症、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症などの疑いがあり、低い場合は、βリポ欠損症、甲状腺機能亢進症、栄養障害などが疑われます。
・総ビリルビン
ビリルビンの大部分は、赤血球に含まれる蛋白質のヘモグロビンが処理されて生じる胆汁色素です。生成された間接ビリルビンは、肝細胞でグルクロン酸抱合を受けて直接ビリルビンとなり、胆管を通じて腸管に排出されます。血清中のビリルビンの値が異常になった場合は、これらの過程のどこかに異常が生じたことを意味します。総ビリルビン量とその分画の測定は、黄疸の診断や代謝過程、病状の経過などを把握するのに、重要な検査となります。
*基準値と異常値
基準値:血清中の総ビリルビンの基準値は、0.2〜1.2mg/dlです。 異常値:基準値より値が高い場合は、肝炎、肝硬変、肝臓ガンなどの肝疾患、胆道系疾患、溶血性疾患、体質性黄疸、新生児生理的黄疸などの疑いがあります。
・GOT
ASTは、アミノ酸とα-ケト酸とのアミノ基転移を触媒する酵素の総称であるトランスアミラーゼの中でも、臨床的に重要な1つです。日本では、長い間GOTの名称で呼ばれてきました。心筋、肝臓、骨格筋、腎臓などに多く存在しますが、普通、血液中にはわずかしか存在しません。これらの臓器や部位の細胞が変化すると、血清中のASTは上昇するので、急性肝炎の早期発見や慢性肝炎の経過を視察するために、この検査が重要になります。
*基準値と異常値
基準値:ASTの基準値は、血清中で10〜40IU/Lです。 異常値:基準値より値が高い場合は、急性肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝臓癌のほか、心筋梗塞、筋疾患などを疑います。特に急性肝炎の場合は、早期から上昇が見られ、最高値は500 IU/L以上にも達することがあります。ASTは血液中に微量にしか存在していないので、基準値より低い場合は問題ありません。
・GPT
ALT、別名GPTは、トランスアミラーゼの1つで、肝臓、腎臓、心筋、骨格筋などに多く存在しています。ASTに比べるとその含有量は少なく、一番多い肝臓でさえASTの3分の1以下で、血液中にはほんの微量しか存在していません。しかし、血清中のALTは、肝細胞の編成や壊死に敏感に反応して上昇するため、ALTの測定は、特に肝臓や胆道の疾患の有力な指標として頻繁に用いられています。
*基準値と異常値
基準値:ALTの基準値は、血清中で4〜50IU/Lです。 異常値:基準値より値が高い場合は、急性肝炎が疑われます。軽度の上昇がある場合(正常値範囲のこともあり)は、慢性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝臓ガンなどの疑いがあります。
・ALP
ALPは、体内の各組織に存在する酵素、フォスファターゼの1つです。
*基準値と異常値
基準値:血清中のALPの基準値は、成人の場合、110〜350IU/Lです。 異常値:基準値より値が高い場合は、肝疾患、胆道系疾患、骨疾患、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍などの疑いがあります。ほかに生理的な上昇として、子供の成長期あるいは妊娠後期などがあります。基準値より値が低い場合は、何ら問題がありません。
・γ-GTP
γ-GTPは、γ−グルタミンペプタイドを加水分解するとともに、γ-グルタミル基をほかのペプチドやアミノ酸に転移する酵素で、主に腎臓や膵臓、肝臓など上皮細胞に存在しています。γ-GTPは、個体差が大きく、基準値は年齢や性別、飲酒歴などで大きく変動するものの、肝臓や胆道系の疾患、中でもアルコール性の肝障害で著しく上昇するので、こうした病気の診断、経過観察、治療の指標として利用されています。
*基準値と異常値
基準値:血清中のγ-GTPの基準値は、男性で80IU/L以下、女性で30IU/L以下です(いずれも飲酒習慣のある人も含めての基準値)。 異常値:基準値より値が高い場合は、急性肝炎、慢性肝炎、肝臓癌、肝硬変、アルコール性肝障害、薬剤性肝障害、胆道系疾患、膵頭部癌、心筋梗塞などの疑いがあります。中でもアルコール性の肝障害では、アルコール性肝炎、肝硬変、脂肪肝の順に高い値を示します。
・コリンエステラーゼ
コリンエステラーゼは、コリンエステルをコリンと有機酸に加水分解する酵素で、血清や肝臓、神経や筋肉、赤血球に存在しています。中でも血清や肝臓に存在するコリンエステラーゼは、肝臓で合成され血液中に放出されるため、その活性の低下は、肝実質細胞の機能障害を反映します。そのため、この部分のコリンエステラーゼの検査は、肝機能の診断に重要な役割を果たします。
*基準値と異常値
基準値:血清中のコリンエステラーゼの基準値は、3000〜7000IU/L(ブチリルチオコリン基質法)です。 異常値:基準値より値が高い場合は、糖尿病、脂肪肝、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症、ぜんそくなどの疑いがあります。逆に基準値より低い場合は、慢性肝炎、肝硬変、肝臓ガンなどの肝実質障害や、悪性腫瘍、重症消耗性疾患、栄養失調、粘液水腫、有機リン系農薬中毒などの疑いがあります。
・LDH
LDH(乳酸脱水素酵素)は、解糖系の酵素として体内の各組織に広く存在しています。特に肝臓、腎臓、筋肉に多く、本来は血液中にはわずかしか存在しませんが、心疾患や肝疾患をはじめとする悪性腫瘍、白血病の場合、血清中にLDH量が増えることもあるため、検査が必要になります。中でも急性肝炎の初期、慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌では、LDHの量が上昇する傾向が見られます。
*基準値と異常値
基準値:LDHの基準値は、血清中で290〜540IU/Lです。 異常値:基準値より高い場合は、急性肝炎や慢性肝炎、肝臓癌などの肝疾患、心筋梗塞やうっ血性心不全などの心疾患、肝胆道癌や膵臓癌、大腸癌などの悪性腫瘍、悪性貧血や溶血性貧血、白血病などの血液疾患を疑います。ほかに、妊娠中や筋肉の疾患、過激な運動をした後にも高くなることがあります。基準値より低い場合は、問題ありません。
・CPK
クレアチキンナーゼ(CKまたはCPK)には、MMの筋型、BBの脳型、この2つのハイブリッドであるMB型があります。正常な骨格筋のCKはすべてMM型、心筋はMM型とMB型を持っていることが特徴です。また、BB型は脳や神経をはじめ、平滑筋、前立腺、甲状腺などに含まれています。特に、MB型は心筋に高濃度で存在しているので、心筋梗塞を診断するうえで、きわめて有用です。
*基準値と異常値
基準値:血中のCK−MBの基準値は、検査方法によって違ってきます。CLIAを用いた場合は、7.4ng/ml以下、免疫阻害UV法によって検査を行なうと、基準値は4〜21mlU/ml以下になります。 異常値:検査結果の数値がこれより高い場合には、急性心筋梗塞が疑われます。
・血糖
血糖とは、血液中のブドウ糖(グルコース)のことをいいます。血糖値は食事などにより変動しますが、変動幅は一定の範囲内で、その調節には間脳、自律神経、ホルモンなどが深く関与しています。血糖検査は糖尿病の診断や経過の観察に不可欠で、通常スクリーニング検査として早朝、空腹時の血糖値が測定されます。
*基準値と異常値
基準値:検査法は主に酵素法が用いられます。基準値は空腹時で60〜110mg/dlです。 異常値:血液中のブドウ糖は腎臓の糸球体でいったん濾過されますが、正常ではすべて尿細管から再吸収されます。しかし、血糖値が約170mg/dlを超えると完全には再吸収されず、尿中にブドウ糖が現れます。基準値より数値が高い場合は、糖尿病、急性および慢性膵炎の疑いがあり、低い場合は、インスリンノーマ、内分泌疾患などが疑われます。
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