最近少しずつ円安になってきましたが、数年前の常識からするとまだまだ円高水準であることは間違いありません。そんな中、日本で生産するのではなく中国で部品から全て製造する動きがますます加速しています。

今月の平電機新聞は今の中国とこれからの中国について書いてみたいと思います。私は以前にも書いてきましたが、中国に5年ほどいて会社を立ち上げましたが将来的に中小企業が中国でやっていくのは厳しいと判断し撤退した人間です。

インターネット版の英エコノミスト誌によると「中国イコール安い賃金」と言った言葉は死語になりつつあると言っています。今や世界の20%以上の製品製造が中国で行われることから誰も異論することなく世界最大の製造大国となった中国では労働者の賃金がさらに加速していると言います。



スタンダードチャータードと言われる投資銀行の調査では今年に入ってから珠江デルタの製造業の人件費が10%も上昇したと事がわかりました。今人気のアップル社のiPadを製造している台湾の富士康社では中国にある工場で従業員の給与を16〜25%引き上げたそうです。

この賃金上昇率が異常な事は他国と比較すればわかるとローランド・ベルガ―社(コンサルティング会社)は言います。発展が著しいフィリピンでは人件費の値上げが8%、メキシコでは1%にとどまっているの対し中国では2割近く上がっているのです。

私が中国の天津で会社を立ち上げた時も同じ経験を致しました。毎年最低賃金が20%ずつ上がるのです。当時中国人の給与は日本の20分の1と言われていましたが、毎年20%も最低賃金があがるのであれば将来的に日本で製造しているのと変わらないと思い撤退の決断をしたのが当社です。

それを裏付ける推計としてアリックスパートナーズ(コンサルティング会社)は中国の人件費が年間30%と上昇し、通貨や輸送費が年間5%上昇すれば、3年後の生産コストは北米同等になると発表しています。

もちろん推計ですからこのデータ通りに世の中が動くわけではありませんが、凄まじい勢いで生産コストが上がっているのがわかります。

では、今後の中国はどうなっていくのでしょうか?中国より人件費が安い国は沢山あります。一部の会社では中国以外の国に工場をつくり低価格商品を製造しています。成功例としては1,000円以下のジーンズなどがそれにあたります。

しかし、失敗例も多数あるそうです。PPC社と言うテレビ用のコネクタ−メーカーではベトナムに進出しようとしたが、サプライチェーンの不備で断念したそうです。他の業種では、ブリキ缶を製造している香港の会社がスリランカ(中国より人件費が35%〜40%安い)へ進出したが、労働者の効率が悪いために苦戦しているそうです。

中国以外の国が製造大国になるのはしばらく時間がかかりそうです。では、中国の魅力はと言うと、世界の人口1位は中国なのは不変ですので市場としての魅力があります。また、法整備が整っていないのがある意味中国の魅力と言えるかもしれません。

ニューヨークタイムズ紙によると中国でiPhoneを製造する会社は、ある日突然突発的な需要に対応すべく、深夜に寮にいた8,000人の従業員を叩き起こし作業させたと言います。地方労働者が多い中国では、沿岸部の工場に寮に住みながら仕事をすることは珍しくありませんが、夜中に叩き起こされて仕事をするのは法整備の整った国では労働基準法違反になりそうです。

このように考えると中国がしばらく「世界の工場大国」として君臨すると思われます。しかし、人件費の高騰や一人っ子政策による労働人口の低下、そして法整備が整うことでの+アルファの部分が無くなると中国の魅力が半減するかもしれません。つまり中国の今後は今までのような製造生産ではだめなのです。

それにいち早く気付いた中国企業があります。華為社です。この会社はIBMやアメリカのコンサルティング会社からいろいろな事を学び、今後は付加価値の高い商品を製造しないとだめだと方向転換を図ったそうです。以前はよそで設計された図面を基にどれだけ精工に製造するかだけを課題としてきたそうですが、自分で設計し、新しい物を作ると言った形に方針を変え、今年の初めに世界で一番薄く、世界で一番早いスマートフォンを製造したそうです。

この話を知った時私は、日本の中小企業も同じではないかと感じました。日本の99.7%は中小企業です。そのほとんどがよそで設計された図面を基にどれだけ精工に製造するかだけを課題として頑張っています。しかし、市場が小さく、労働人口が低下している日本では非常に厳しい状態です。我々も中国から学ぶ事が多々あるようです。