先日、当社の食堂のテレビが故障したので、新しいテレビを家電量販店に買いに行きました。今まで使っていたテレビ画面の大きさから、同じ32型のテレビで一番壊れにくいテレビをくださいと言うと日本の某有名S社製を勧められました。LEDタイプで省エネであり、S社製だとさぞ高いと思えば、たったの3万5千円でした。

私はその値段にびっくりしました。私が5年前に買った20インチのテレビは当時まだ薄型テレビが流行りだしたころだったので、10万円はしました。それが今はこんな大きなテレビがたったの3万5千円です。こんな商売をしていたらS社の倒産話も頷けます。たぶん、作っても作っても儲からないでしょう。

これは決して他人事ではありません。当社の製品もテレビ等の家電に使われているからです。材料費が上がっているのにコストダウンの要求は年々厳しくなります。このままだと日本企業のほとんどがコストダウンの波にのまれて無くなるでしょう。そこで、私はマーケティングを勉強しようと思い、「100円のコーラを1000円で売る方法」と言う本をよんでみましたので、今月の平電機新聞ではマーケティングについて書いてみたいと思います。

私は、マーケティングについて素人ですので難しい教科書は理解できません。この「100円のコーラを1000円で売る方法」は物語になっていて、マーケティング素人の主人公がマーケティング手法を勉強しつつ製品を企画・販売する事が書かれています。

この本の著者である永井孝尚氏によると日本の企業は高い技術力があるのに安く物を売らなければならないジレンマに陥っていると言います。その最大の理由は「カスタマー・マイオピア」と言う悪い意味でのお客様中心主義です。日本ではよく「お客様は神様です」と言ったように顧客を大事にする風土がある国です。お客様の要望は何でも聞こうと言う勤勉な姿勢は良い部分もあるのですが、何でもかんでも要望を聞き入れてしまうと逆に顧客は離れます。真のマーケティングはお客様の気づかない課題を考え、それを解決する提案をする事だそうです。

そう言えば以前アップルの創業者のスティーブ・ジョブズが「僕は自分が欲しい物を知っているし、みんなが欲しい物を知っている」言っていました。アンケートでこんなコンピューターが欲しい、あんなコンピューターが欲しいと言った市場のニーズを無視し製品を作り爆発的にヒットしたのがiMacです。ジョブズはマーケティングの本質を知っていたのかもしれません。

ブルーオーション戦略の話も面白かったです。例としてあげていたのはキシリトールガムでした。フィンランド生まれのこの甘味料は虫歯予防に役立つと言われていますが、発売当初は値段も高く知名度も無いのであまり売れていなかったそうです。ちょっと変わった甘味料のお菓子と言った位置づけだと競合がたくさんいるレッドオーションと呼ばれる市場で戦わなければならず、今のように売れなかったでしょう。そこで知名度を上げるべく歯医者さんと組んで虫歯になりにくいガムとして宣伝しました。



でも考えてみてください。虫歯にならないと歯医者さんは仕事になりません。なぜキシリトールガムを売っているのでしょうか?それはキシリトールのメーカーの戦略で歯医者=虫歯だった常識を歯医者=虫歯予防といった常識にしたことが相互の利益を生むことになったのです。虫歯の人口など所詮10%くらいです。後の90%は歯医者にとっては顧客では無かったのです。それを歯医者は虫歯予防のために行くものだと言った宣伝をし新しい市場を作った事により歯医者に喜ばれ、その虫歯予防の一環でキシリトールガムを宣伝したことでキシリトールの知名度も上がったのです。まさにWin Winのすばらしい戦略と言えます。

コストを下げる点もこの本では言っています。コストを下げていい企業はその市場のシェアトップ(市場リーダー)だけだそうです。一番シェアを握っているからコストを下げても利益がでるのです。業界2番手や3番手がコストを下げたら、コストダウン競争で必ず業界1番手に負けるそうです。つまりほとんどの企業はコストダウン合戦をしてはいけないことになります。ではどうするか?それはこの本のタイトルのように100円のコーラを1000円で売る方法を見つけることです。つまりバリューセリングです。

量販店で100円で買えるコーラは高級ホテルのルームサービスでは1000円します。コーラと言った液体は同じですが、1000円の方はサービスや演出と言った付加価値がついているから高く売れるのです。



今まで我々中小企業はマーケティングなど考えずにお客様の要望通りの事を行ってきました。品質も上げて価格も下げました。でもそれでは駄目な時期に来ているのかも知れません。これからは我々中小企業もマーケティングを勉強する必要があるようです。