ここ数回の平電機新聞では日本の未来についての危機感を書いてきました。それはリスク回避は危機感が無いとできないからです。ただ、日本の未来に悲観する必要もないと思います。日本にはいまだに優れた力「失敗してもあきらめない心」があるからです。今月の平電機新聞は日本のモノづくりから見える「失敗してもあきらめない心」でできた製品を紹介したいと思います。

「日本のモノづくり力はやっぱり凄い」と言うロム・インターナショナルが書いている本を読むと題名のように日本は凄いと感嘆させられます。

例えば日本のトイレは不浄の間からリラックスする空間へと変わってきています。暖房機能がついた便座や自動でトイレ事態を洗う機能などハイテクの推移がここにあると言われる程充実しています。このような空間にしたのはやはり日本企業のTOTOの力が大きいと思います。



TOTOが「ウォッシュレット」と言う商品名でお尻を洗う機能がある便座を売り出したのは1980年の事だそうです。実はお尻を洗うと言う発想はアメリカのビデ社が特許をとり商品化していたそうです。TOTOは元はビデ社のその製品を輸入販売していましたが、さっぱり売れなかったそうです。理由はいろいろありますが、温水の温度や角度調整など消費者の意見をあまり入れていない設計が原因のようです。

そこで自社で作ろうと1977年にビデ社から権利を譲り受けて製品開発に取り組みますが、苦労の連続だったようです。よい物を作ろうとするとたくさんのデータを集めなければなりませんが、トイレの事ですから協力してくれる人を探すのが一苦労だった言います。時には土下座しながらデータ集めに協力してもらい3,000人分のデータを元に「ウォッシュレット」を開発したのです。今では全世界で3000万台以上のヒット商品となっています。



他にも日本の凄いモノづくりを証明する製品として電卓があります。電卓はもともと1963年にイギリスのサムロック・コンプトメーター社が真空管を利用した電卓を発明しています。しかし、真空管方式は寿命が短くさらに計算が遅いと言った弱点がありあまり広がりませんでした。そこで日本のシャープがトランジスタを使用した電卓を開発します。



性能は格段に上がりましたが、重さが25Kgもあり一般に普及するまでには至りませんでした。その後改良を重ね1973年にカシオが315gで手のひらサイズの「カシオミニ」を開発し、価格も下げたため、会社の事務等で使用されだしました。それをきっかけに他の企業もこぞって開発をしたため、より軽く小さく安い電卓が商品化され今日のようにだれでも持っている時代が来ているのです。

針なしホッチキスも日本のすばらしい発明です。この製品ももともと原理としては100年も前にアメリカで考えられていたようです。しかし、保持力が弱いうえに4枚までしかとめることができないため何十年間も影をひそめてきました。この弱点を解決し商品化したのが日本のコクヨです。



2009年に保持力が格段に良い方式を生み出し「ハリナックス」と言った針なしホッチキスを開発します。この時点では4枚までしか綴じられませんでしたが、その後改良を重ね10枚まで綴じられるようにしました。今では価格も安くなり一般の人に広く使われています。



今回紹介した製品の共通点はもともと日本で生まれた製品では無いと言う事です。全世界に60億人もいればいろいろなアイディアを持つ人がいます。しかし、そのアイディアを形にして世の中の人に広めていくには数々の壁にぶつかるはずです。日本のモノづくりはこの壁を壊してきたのです。「失敗してもあきらめない心」が無いとこれらの製品は今我々の手にはありません。この不屈の心があれば日本のモノづくり企業は今後も生き残れるのではないでしょうか?