皆さんリサイクルをしていらっしゃいますか?ご家庭でも会社でもゴミの分別はしていると思いますが、我々人間が行っているリサイクルなど生物からみるとまだまだ甘いようです。最近経済的な話が多かったので今月の平電機新聞では環境について書いてみたいと思います。

私が凄いリサイクルだと思うのはサンゴです。サンゴはサンゴ礁などをつくりだす動物なのですが、普段は植物のように太陽の当たる場所に繁殖します。その理由はサンゴの中には褐虫藻と言われる植物プランクトンが住んでいるからです。

このサンゴと褐虫藻の関係は非常によくできています。サンゴはイソギンチャクの仲間ですが、石の家(炭酸カルシウムの家)に住んでいます。その家に褐虫藻も住まわせるのです。人間の世界でいえばサンゴは大家さんと言ったところでしょうか?



この石の家に住まわせてもらっている褐虫藻は家賃を払います。褐虫藻は植物プランクトンですから光合成を行います。光合成では糖分(でんぷん)ができます。そのでんぷんの約9割を家賃としてサンゴへ供給するのです。でんぷんは我々ではお米に置き換えられます。やっぱりおかずが欲しいですよね。サンゴは褐虫藻からおかず?と言うか副食として必須アミノ酸を補給してもらいます。タンパク質をつくるには必須アミノ酸が必要だからです。



さらにサンゴは動物ですのでゴミ(排出物や二酸化炭素)がでます。そのゴミも褐虫藻は引き取ってくれるのです。収入(光合成でできたでんぷん)の90%をおさめ、さらに「おかず」もあげ、さらにゴミも捨ててくれる。ここまで聞くとサンゴは悪徳大家みたいに思われます。しかし、サンゴも頑張っているのです。

サンゴは海中のカルシウムと炭酸ガスを合成して炭酸カルシウムと言う家をつくるのですが、光合成する褐虫藻のために日当たりが良いところに家を建てます。その姿は光合成を行う木や葉っぱに似ています。動物であるサンゴは木や葉っぱの形に家を建てる必要ありません。褐虫藻のために建てるのです。

さらにゴミと言われる排出物にはリンや窒素が含まれています。植物を育てている方はお分かりだと思いますが、植物には肥料が必要です。その肥料は窒素、リン、カリウムなのです。カリウムは海水にたくさんありますので、窒素、リンが必要となります。つまり褐虫藻がゴミを引き取ってくれるのは、言い換えればサンゴがゴミを供給しているのです。

二酸化炭素も同じです。光合成には二酸化炭素が必要です。サンゴが排出した二酸化炭素を活用し酸素とでんぷんを褐虫藻がつくります。サンゴはその酸素とでんぷんを家賃としてもらうのです。

さらにサンゴは収入の1%しか自己の成長に使いません。残りの半分は自分の維持ですが、他は粘液を作るのに使います。粘液はサンゴと褐虫藻の表面を覆うのですが、これは海中のゴミがサンゴの表面について埃だらけになると光合成ができなくなるからです。粘液をつねに新しくして光合成を助けます。また紫外線対策の物質をサンゴがつくり褐虫藻の日焼け対策(紫外線によるダメージ軽減)をします。サンゴも頑張っているのです。



あまり知られていませんが、海水魚の種類のうち3分の1はサンゴに住んでいます。世界の漁獲対象の10%はサンゴ礁に住んでいます。しかし、サンゴの4分の3は絶滅寸前だと言われています。

ある人がサンゴが我々に与えるサービスをお金で計算しました。漁業として年間100億円、レクレーション(リラックス効果等)で2400億円、防波堤として80〜800億円もするそうです。我々は凄いサービスを受けておきながらお金を払っていないのです。

当社はISO14001を認証取得しており、環境に配慮した活動をしております。リサイクルもその一つです。しかし、我々人間が行うリサイクルはまだまだ完璧とは程遠く、サンゴと褐虫藻のような究極のリサイクルまで行っていません。我々は将来のためにもっと環境に配慮しなければならないのではないでしょうか?