人付き合いが増えると、時には自分に害をなす者との交際が必要となるケースもある。そんなとき、よく口にしてしまうのが「根はいい人なのだけど」という言い訳だ。

世の中には根っからの悪人などそう多くはいない。誰だって、どこか人間味のある性格や行動はあるものだし、しっかりと内面を見つめてみれば愛すべき点が見つかるものだろう。だが「根がいい人」との付き合いははっきり言って損をする。

私は、つい最近、実体験として「根がいい人」といわれる相手を拒絶した。

●「彼氏、刺青が入っているんだよね」

わが家には娘がいる。

24歳の娘はいわゆる「出戻り」で、20歳のころにパートナーとの間に授かった女児を産み、すぐに離婚した。離婚後はわが家に戻って同居しているので、世間から見ると「子連れの出戻り」といったケースだ。つまり、わが家には娘と孫娘がいる。

そんな娘が、最近になって「今付き合っている彼氏を紹介したい」と言いだした。

「なんだ、なぜそんないい話を黙っていたんだ」と嬉しく感じたが、娘はなにか言いにくそうな雰囲気を醸し出している。娘の次の言葉は衝撃的だった。

「彼氏、刺青が入っているんだよね」

聞けば、娘の彼氏はいわゆる「暴走族OB」というやつで、以前はバイクで暴走行為やケンカなどの犯罪行為を繰り返していたらしい。今ではすっかり足を洗い、建設作業員として真面目に働いているとのことだが、当時は暴力団関係者との付き合いもあって、腕から背中まで立派な和柄の刺青が入っているのだという。

娘にとっての評価は、「刺青を入れているが根はいい人」だそうだ。

私は、その面会を断った。どうしても「根はいい人」という言葉の違和感を払拭できなかったからだ。「いい人」が集団暴走行為などするはずがないし、暴力団関係者と交際して刺青までいれてしまうことなど考えられない。

もし、そんな男に大切な娘と孫娘の未来を任せてしまえばどんなことが起きるのか。

悲劇的なイメージしか浮かばない。いくら成人した娘だからとはいえ、自発性や自己責任だけで済まされる問題ではないし、リスクから遠ざけたいと望むのは親として当然の判断だろう。

●私は「時代遅れの老害」なのだろうか

この一連の流れをTwitterに投稿したところ、瞬く間に拡散されてリツイートも1万件を超えた。「当然だ」「反社会勢力のイメージが強い」といった賛同のコメントも多かったが、一方で攻撃的なコメントも決して少なくはなかった。

「人間を見た目で判断するなんて、時代遅れの老害だ」、「海外では批判されていない」、「毒親をもった娘がかわいそうだ」、「刺青に対する差別を正すべきだ」……。

私も、ある程度の批判があるだろうとは予想していたが、まさか差別問題にまで言及するユーザーがいることまでは考えていなかった。

わが国における刺青は、古代では儀礼的なものとして、江戸時代では町衆以下の「粋」の象徴として栄えてきた。また、海外でも美術的な意匠が高い評価を受けている。

だが、江戸時代には罪人の証として刺青が施された経緯もあり、「苦痛もいとわない無法者」のイメージが現代においてなお定着していることもまた周知の事実だ。海外ではタトゥーが広く容認されており、国内でもタトゥーを入れたトップアーティストやアスリートが目立ち始めたとはいえ、やはり刺青にはアウトローのイメージがつきまとう。指定暴力団の構成員などには漏れなく刺青が入っているため、世間では「怖い」というイメージがあって当然だ。

ところが、意外なほどに刺青を容認する声は多かった。ファッション感覚でタトゥーを施している人も増えて、以前ほどの抵抗感はなくなっているのだろう。

それでも刺青は基本的に「好きこのんで施すもの」だ。刺青が入った状態で生まれてくる人間なんていないし、幼いころに身体を縛り付けられて施される悲劇的な虐待も稀だろう。

ケガや大きな手術の傷痕を隠すために刺青を施すケースは別として、好きこのんで施した刺青のために蔑視されることを「差別だ」と批判することを、私は甚だ滑稽に感じざるをえない。

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現代ビジネス 鷹橋公宣 Webライター 2019/08/22 より引用

行政書士田中綜合法務事務所