伊藤さんの主張が認められた理由

 12月18日(水)午前。東京地方裁判所では、ジャーナリストの伊藤詩織さん(30)が、元TBS記者の山口敬之氏(53)からの性暴力により、肉体的、精神的苦痛を受けたとして損害賠償を求めた訴訟の判決公判が開かれました。

 伊藤さんの支援者と報道陣が地裁正門前に大勢詰めかける中、10時30分過ぎ、「勝訴」と大きく書かれた紙を持った男性が現れ、どよめきが起きました。そして間もなく、伊藤詩織さん本人が報道陣の前に姿を見せました。

 伊藤さんは硬い表情のまま、勝訴したこと、山口氏の反訴が退けられたことを告げました。「判決内容はこれから弁護士が精査する」旨を話し、カメラマンに促されて「勝訴」の紙を手にした時、「この紙を持って、実感しました」とようやく少し和らいだ表情を見せました。

 東京地裁の鈴木昭洋裁判長は、山口氏が「酩酊状態で意識がない伊藤さんに、合意がないまま性行為に及んだ」と不法行為を行ったことを認め、氏に330万円の損害賠償を命じました。

 山口氏は、伊藤さんが著書『Black Box』などで公表した経緯は事実ではなく、名誉を傷つけられたと逆に賠償を求めていましたが、裁判所はこれを「公表内容は名誉棄損に当たらない」として退けました。山口氏は判決を不服として、東京高裁に控訴する見通しです。

 裁判所は今回、どういう理由で伊藤さんの主張を認めたのでしょうか。筆者は判決当日の夜、TBSラジオのニュース番組「荻上チキ Session 22」で本件の解説を担当しました。判決文、伊藤さん側の当日夕方の記者会見と夜の支援者への報告会、また山口氏側の当日午後の記者会見と、翌日の日本外国特派員協会での会見の内容を合わせ、本件を詳しく知らない読者のためにも、改めて解説します。
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供述の信用度の高さ

 まず、今回訴えられた山口氏は、性行為の事実については認めていたので、裁判の争点は「性行為に合意があったか、なかったか」でした。2人しかいない部屋で起きたことですから、証拠のほとんどは2人の供述です。原告の伊藤さんと被告の山口氏、どちらの供述が信用できるかについて、結論から言うと今回、裁判所は伊藤さんの供述が信用できると判断しました。

 判決では、伊藤さんは2015年4月、就職について相談していた山口氏と東京都内の飲食店で会い、2軒目の寿司店を出た時点で伊藤さんが「相当量のアルコールを摂取し、強度の酩酊状態にあった」ことが認められました。

 このあと、伊藤さんは山口氏にタクシーで連れられてホテルの部屋に入るのですが、判決はまず「強度の酩酊状態にあった、ということは、寿司店においてトイレに入った後、ホテルの部屋で目を覚ますまでの記憶がない、とする原告(注・伊藤さん)の供述の内容と整合的である」と判断しています。

 そのうえで伊藤さんは、意識のない状態での性行為の後に目覚め、ホテルでシャワーを浴びることなく早朝にタクシーで帰宅しました。

 判決では「これら原告の行動は、原告が被告との間で合意の下に性行為に及んだ後の行動としては不自然に性急であり、むしろホテルから一刻も早く立ち去ろうとするための行動であったとみるのが自然である」とし、性行為が伊藤さんの合意のもとに行われたのではなかったことを認めました。

 さらに畳みかけるように、「その日のうちに産婦人科を受診して、アフターピルの処方を受けているが、これは性行為が原告の予期しないものであったことを裏付ける」「数日後に友人2人に事実を告げて相談し、さらに、警察署に申告して相談した」など、その後の事実関係と、伊藤さんの供述は整合性があるとしています。こうしたことを総合して、裁判所は「伊藤さんの供述は信用性が高い」としたわけです。

 伊藤さんの弁護士は、判決後の記者会見で「被害後の詩織さんの行動、早朝にシャワーも浴びずに出て行った、アフターピルを処方してもらうために医者に行った、友人や警察に相談したといった被害後の状況を、しごくまっとうな、被害者としてあるべき行動だと裁判所が評価したことが大きかった」と話しました。また支援者への報告会でも、別の弁護士が「裁判官が性暴力にあった被害者の心理をきちんと理解していると感じた」と評価しました。
https://headlines.ya...
現代ビジネス(12/24(火) 7:01配信 )より引用

行政書士田中綜合法務事務所